den.gif (1201 バイト) (知的生活社会を生きるために)

 

マンションのプランを見て、そこでの生活を夢見て、やがて購入して、しかしそこでの生活が始まってみると夢から現実の生活に戻されます。リストラを始めとする社会不安やら、ローンを始めとする経済問題に心の休まる日はありません。

一家の“あるじ”の休まる場所はトイレの中だけだと言う話しはよく聞きます。

マンションの特色はそのマンションを販売する会社のブランド商品として設計されていて必ずしも設計者の意見を反映しているわけではないのです。そして、そこで暮らす人の個人的問題までも考慮してはいないのが普通です。

自由設計と言ってもそれが出来ないプランも多くあります。

生活の中に書斎を持とうという提案はいろいろな人がしていますし、またその有効性について述べられています。(参考文献参照)

 

一歩間違えば、社会の脱落者の印を押されかねない世の中ですから、自分即ち自己の確立が大事になるのです。

私はマンションの中に自分を取り戻す空間DENを提案します。

DEN(デン)とは鳥や獣の巣、或いはねぐらのことです。

DENという言葉はすでに一般的に使われていてその意味は多目的な部屋、或いは部屋として洋室とはいえない中途半端な広さの空間をしかたなくデンといっていますが、

ここでは人のプライベイトなはっきりと目的を持った空間を指して言うことにします。

 

よく電車を待っていると、向い側のプラットホームで人が疎らに立っている風景を目にします。このことに関してはE・T・ホールが「かくれた次元」(参考文献参照)の中で言っているように動物には固有の空間を持っていることが述べられています。人がプラットホームで見せるあの間隔もそれを表していると言っています。

人のこの空間は約半径0.9メートルぐらいかと思われますので面積的には. 約2.54u(1.57畳)程になります。

日本古来の最も小さい茶室の1畳台目と言われる広さは3.24u(2畳)です。

間(ま)と言う言葉があります。これは人の使う空間の単位を表す言葉です。1.8mx1.8mx1.8mのひろさを一間と言い平面的には3.24uです。

そこで、DENの広さを2.5u(1.5畳)から5u(3.0畳)ぐらいと定義します。

この小さい空間にどんな意味があるのでしょうか。

一人の人間が安心して居ることのできる空間、不安を感じない空間、その最小限空間をDENとします。

あくまでも自己確立のための思惟思索や読書や瞑想を目的にした空間ですから人の身体に合った広さが求められるのです。

気持ちを鎮める、癒しの空間です。疲れて家に帰ってきてほっとする空間です。

人は元来他人とのコミュニケイションを保ちながら生活しますが、時々一人の己となって自分を取り戻すことが必要です。自己の確立(アイデンティテー)です。

元来、書斎と言われる空間があります。広いほど立派に思われますが、DENは書斎にもなりますが心を休める目的があるので広すぎてはいけないのです。

6畳間ぐらいの洋室を一人占めしても書斎にはなってもDENにはならないのです。

最小限の己の空間が必要なのです。お父さんの勉強部屋です。この小さな空間の中に自分の無限の空間が広がります。

利休は茶室を最初は広間を網代の衝立てなどで囲い、それから6畳、4.5畳、3畳台目、2畳台目、1畳台目と狭めていきました。

そこには自分の心と共振する空間を求め、最後はE・T・ホールのいう動物としての最小限空間に辿り着いたと思うのです。

自分自身と共鳴する空間、そしてそれは現代の茶室とも言うべき空間がDENなのです。

 

話しは少し逸れますが、伊達正宗は死ぬときにこのくらいの広さの部屋に閉じこもって亡くなったようです。自分を感じる空間が必要だったのではないでしょうか。

この空間は自分のための空間なので自分が独占することが大事なのです。

DENは充実した人生を過ごす上で必要な空間ですから、そこを自分にとって楽しい空間にすることが大事です。

それには、自分の判断で要る物と要らないものを判別し、この空間に置くものを整理しましょう。

このことで、心の使用可能なメモリー空間を増大させることになります。

大事なものを側に置いて、楽しんでください。

人は自分でプログラムを作って、そのプログラムによって行動する動物です。

この空間での行為はその人のプログラム作成の場となるのです。

仕事や趣味でやりたいことがあれば、その意思決定はここでします。

DENと言うこの空間が今の社会即ち知的生活社会と言われる今日を生きる上では、いかに大事な空間かと言うことが理解出来ると思います。

 

既にマンションに住んでいて6帖程度の洋室を書斎として使っているならば、家具や衝立てなどによって思い切って半分に仕切ってみて下さい。中山庸子氏が言うように背中は壁か本棚がくるように配置するのがよいとおもいます。

或いは、既にDENという名の付いた他目的空間がある人は、そこを自分のDENとしてのはっきりした目的をもった空間にして下さい。言うまでもなく背中側には壁かパネルか本棚がくるようにするのは同じです。

マンションの中に3帖程度の納戸や倉庫或いは収納スペースがあれば直ぐにでもDENにすることができます。子供に洋室を与える前に自分の空間を持つようにしたいものです。

この空間を持つことによって経済的にも安定したマンションライフを送れるものと思っています。

この空間は貴方の宝物です。自分で自分を磨いていける面白さを体験してください。

私はこのDENをすばらしいからと敢えて人に押し付けるために提案をしているのではありません。

この空間を自分で作ってみて自分で体験してみて、それから現代社会においてその必要性があることを認めてから同意して欲しいと思っています。

その人が本当にそうだと思うまでは、その空間は物置か納戸にしかならないでしょう。

この空間が評価されるまでには、もっといろいろな話しを集めてみるつもりです。

自分の心と共鳴する空間を求めたものがこのDENである。

楽しいはずのマンションライフを確実なものにするためにこのDENを提案します。

 

参考文献

  1. 研究的生活の方法 鷲田 小弥太著 東洋経済新潮社
  2. 夢実現のための情報整理術 中山 庸子著 講談社
  3. 居心地のよい簡単生活 デボラ・デフォード著 文香社
  4. 人生の宝物はあなたの心を掃除したとき見つかる コリン・ターナー著 PHP研究所
  5. 日本の室内空間 加倉井 昭夫 主婦と生活社
  6. 兼好法師すまいを語る 西 和夫 TOTO出版
  7. かくれた次元 E・T・ホール著 みすず書房
  8. 茶道辞典 桑田 仲親 著 東京堂

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